弁護士 濱 本 由
私は離婚事件を受任することがとても多いので、今回は、高裁まで争った離婚事件についてご紹介します。なお、離婚事件は調停や裁判上の和解で解決することも多く、控訴審まで争って判決を受ける事件は割合としては少ないです。
ご紹介するケースは、夫婦と幼い子どもの3人家族で、私は妻側の代理人でした。
夫婦の同居期間は3年弱でしたが、夫のモラルハラスメントを理由に妻が家を出て別居を始めました。別居後直ちに、夫から離婚調停が申し立てられましたが、妻は夫との離婚は望んでおらず、夫が態度を改めてくれるならば子どものためにも関係修復したいと願っていました。
受任時点ではまだ別居後数ヶ月であり、お子さんもとても小さいので、裁判所はこのケースで婚姻破綻を認めないのではないかと予想していました。ただ、調停、訴訟が長引き、別居期間もそれなりに長くなってきていたので、念のため証拠から認定できる夫のモラルハラスメントを網羅的に指摘し、夫は有責配偶者であり、夫からの離婚請求は信義則違反であるとの主張をかなり丁寧に行いました。
一審の口頭弁論終結時に別居期間は2年弱となっていましたが、一審判決は同居期間と別居期間の比率、その後の交流状況などから夫婦の婚姻関係は既に破綻していると認定した上で、夫の有責配偶者性を認め、結果として夫の離婚請求を棄却しました。
私としては辛くも勝ったというところで、高裁で同様の結論が維持できるか一抹の不安がありました。そこで、控訴答弁書において再度夫の有責性を丁寧に主張し、一審判決と同様控訴棄却の判決を得ることが出来ました。
この事件を通して学んだことは、別居期間が2年でも同居期間が短ければ婚姻破綻と認定されるケースがあること、有責性の主張立証はとにかく丁寧にしておいて損はないということです。
特に別居期間については、離婚相談で「どれぐらい別居が続けば判決で離婚できるのか?」との質問を受けることがよくありますが、一律判断は危険であり、個別のケースに応じて丁寧なアドバイスが必要になると実感しました。
高裁判決は無事確定し、長い調停・裁判が終わって依頼者もようやく一息つくことができました。また、希望するとおりの判決内容となり、大変喜んで頂けました。
苦しい局面は多々ありましたが、そういうときほど依頼者とのコミュニケーションを密にして、丁寧に相手の主張や証拠を検討することが重要と再確認した事件でした。
以 上