弁護士 濱 本 由
先日、あるお母さん(子どもは兵庫県内の私立小学校に通学中)から「学校の先生から子どもが受けた発達障害の検査結果を提出するように言われた。強く求められているが提出しなければならないか?」という質問を受けました。
確かに、児童に対する個別の配慮を求める場合、発達検査の結果を学校と共有しておくことは一定の合理性があるようにも思われます。しかし、発達検査の結果には児童のIQが記載されており、プライバシー保護の観点からは特に慎重を期するべき情報であるといえます。
このような場合、学校(私立小学校)がどこまで情報にアクセスできるかについては個人情報保護法に規定されています。発達検査の結果は「要配慮個人情報」に該当します。
要配慮個人情報とは「本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取り扱いに特に配慮を要する」情報をいい、人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪歴、犯罪によって害を被った事実等が含まれます(個人情報保護法2条3項)。身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)があること、または過去にあった事を特定させる情報も「要配慮個人情報」に該当します。
このような情報は、本人の重要なプライバシーに属するうえ、本人に対する不当な差別や偏見等の不利益を助長しやすいので、基本的に、本人の事前同意なしに取得することが禁止されています。
したがって、本件のようなケースで、保護者は学校からの開示要求を断ることができますし、学校も保護者の同意なく検査機関等に直接開示を求めることはできません。
このお母さんに対しては、以上の内容をご説明し、学校の要求は断ってもいいこと、お子さんに対する個別の配慮を求めるにあたり発達検査の結果の共有が必須とまでは言えないことから、学校と他の方法でお子さんに関する情報を共有されてはいかがかとアドバイスしました。