弁護士 濱本 由
人が亡くなった場合に、その子供や配偶者などが亡くなった方の財産(遺産)を取得するのが相続制度です。しかし、遺産には借金などマイナスの財産も含まれます。相続のせいで無条件に借金を背負うことになっては困るので、民法上、相続放棄や限定承認などの制度が準備されています。つまり、相続人は、遺産について①単純承認(プラスの財産もマイナスの財産も全て相続する)、②限定承認(プラスの財産の範囲でマイナスの財産を相続する)、③相続放棄(プラスの財産もマイナスの財産も全て相続しない)のどれかを選ぶことができるのです。
ただ、相続人が、亡くなった方の財産内容を把握しておらず、相続すべきか放棄すべきか簡単に決められないこともあります。そのため、民法は「相続人が、被相続人が死亡し、それによって自分が相続人となったことを知ったときから3ヶ月」の熟慮期間を設け、その期間内に、家庭裁判所で相続放棄や限定承認の申述をすればよいとしています。また、3ヶ月の熟慮期間では、資産や債務の内容を把握しきれない場合には、家庭裁判所に対して熟慮期間の延長を申し出ることができます。
コロナウイルス感染拡大によって、社会生活が全面的にストップし、遺産の調査が困難な時期がありました。また、感染による入院やお身内に感染者が出た等の事情で相続財産の調査ができなかった方もいらっしゃるでしょう。このような場合には、熟慮期間の延長申立制度を利用することをお勧めいたします。法務省のホームページ上でもコロナウイルス感染拡大の影響による熟慮期間の延長申立に言及していますので是非ご参考になさってください。
ただ、この場合も、熟慮期間内に延長の申立を行わなければならず、何もしないまま3ヶ月経ってしまった場合は、単純承認したと見なされますのでご注意ください。また、申出先の裁判所は亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
以 上