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2019-07-25 ノーモア・ヒバクシャ訴訟についての報告②
 
 
✦ノーモア・ヒバクシャ訴訟についての報告②✦

弁護士 藤原 精吾(ノーモア・ヒバクシャ訴訟 全国弁護団 団長)


「今なお続く被爆者の苦しみとノーモア・ヒバクシャ訴訟
―世界の放射線被害者の声で核兵器廃絶を」

9,泣き寝入りできない被爆者は、集団訴訟が終わったあと、病気と高齢をおして、全国7地裁に118人が裁判を起こしました。その内77人が勝訴し、今日現在、最高裁3人(愛知、広島、長崎の被爆者)大阪高裁2人と大阪地裁で7人の被爆者が裁判をたたかっています。
 現在も厚労省は、
① 新基準からわずかでも外れると却下します。最近における非がん疾患の認定率は43.54%です。全体で848人の被爆者が却下処分を受けています。
② 訴訟では、国の代理人は、被爆者に、70年前、どこで何Gyの放射線を浴びたのか、明らかにしない限り原爆症認定はしないといいます。
 70年の時の壁を隔て、0歳で、5歳で被爆した者に、被爆線量を云え、とは無茶な言いがかりです。
③ しかし、ノーモア・ヒバクシャ訴訟では判決で約80パーセントの被爆者の却下処分が取り消されています。これは厚生労働省の現行「新基準」がなお誤っていることを示しているのです。
④ ところが厚生労働省は、今や地裁判決で負けても、控訴して争いを続けています。まだ被爆者は15万人いますが、あと10年も経てば生存者はほとんどいなくなります。政府はそれを待っているのでしょう。同時に放射性物質の飛散による影響を否定したいからです。現在、フクシマの子どもを中心に甲状腺ガンや機能低下症のあるなしが論争されています。
 政府は、原爆被爆者の事件を、原発の被害を過小に評価させるためにも使おうとしているのです。極めて政治的な動きです。これは、フクシマの問題だけでなく、マーシャル諸島やカナダその他全世界の被爆者の問題であり、かつ原発周辺の住民、原発で働く労働者の問題、核燃料廃棄物の処理基準の問題でもあります。すべてはつながっています。

10,解決の方向性と展望です。
(1)被爆者の願いは、ノーモア広島・長崎・ノーモア・ヒバクシャ、これ以上被爆者を生んではならないことを、自らの存在によって世界に訴えることです。2017年7月7日に成立した国連核兵器禁止条約はその重要な一歩です。しかしこの条約が国際的な法的規範性を持つためには、なすべきことが、まだ沢山あります。
 条約の加入国を増やし、たとえ核保有国が加入しなくても国際的に確立した国際人道法として、グローバル・スタンダードとするため、被爆者の訴えとこれを支える広範な市民の運動が必要です。
(2)被爆者は国の謝罪と補償を未だ受け取っていません。マーシャル諸島の住民をはじめ、核実験被害者も同様です。核実験の被害者、原発事故の被害者、原発稼働に必要な労働者の被曝、核廃棄物による環境汚染の被害者がいます。
 万国の放射線被害者は団結しなければなりません。
 私たちは、これ以上放射線による被害者を出さないことを求めます。
 国が被爆者に対する国家補償の責任を果たすことを求めます。
 ノーモア・ヒバクシャ訴訟はその目標への手段です。被曝の実相を法廷から世界に発信し、政府の責任を追及します。
✦世界人類の願いである核廃絶のため、被爆者はその先頭に立っています。
以上

*原水爆禁止2019年世界大会のパンフレットに藤原の原稿が掲載されています。世界大会は8月5日と6日広島で、7日から9日まで長崎で開かれます。
広島の原爆資料館は今年リニューアルされています。是非行ってみてください。

190722藤原ブログ写真