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2018-03-02 第60回人権擁護大会シンポジウム(第3分科会)開催報告 1
 
 
第60回人権擁護大会シンポジウム(第3分科会)開催報告 1
琵琶湖がつなぐ人と生きものたち~市民による生物多様性の保全と地域社会の実現をめざして~
弁護士 吉江仁子

1 はじめに
 去る2017年10月5日、滋賀県大津プリンスホテルにて、日本弁護士連合会(以下「日弁連」と言います)主催で、標記のシンポジウムを行いました。身近な自然、地域固有の生物多様性の保全を実践しながら、地域社会を豊かに発展させる国内外の取り組みが紹介され、私たちの社会が、持続可能に豊かに発展していくための法制度や枠組みについて、示唆に富む内容になりましたので、報告いたします。
 参加者は334名でした。

2 第1部
(1)第1部は、開催地の滋賀県の琵琶湖再生の取り組みに焦点が当てられました。
(2)基調講演は、西野麻知子氏(びわこ成蹊スポーツ大学スポーツ学研究科教授)より、「琵琶湖の生物多様性」について、以下のようなお話しをいただきました。
 琵琶湖は、湿地帯・古代湖としての二側面を有している。生物多様性が豊かで固有種が多いのが古代湖の特徴である。琵琶湖周辺の湿地帯である内湖は、琵琶湖周辺のヨシ帯の60%近くを占め、ヨシ帯を利用する生物のすみ場として重要な役割を果たしてきた。しかし、内湖もヨシ帯の面積も大きく減少している。人との関わりが深かった周辺湿地(内湖・氾濫原+水田)の生物、琵琶湖本湖(大湖沼・古代湖)の生物、二つの環境が広面積にわたり長期間存続してきたことで、琵琶湖の生物多様性が育まれてきた。穏やかな内湖と波浪の強い北湖、この二つのコントラストを守ることが大事である。
(3)琵琶湖で活動する市民から、活動の報告がありました。
ア「須原魚のゆりかご水田プロジェクト」代表の堀彰男氏より
 昭和30年代頃まで、この辺では、毎日、おかずにする魚を田んぼに取りに行っていた。生き物がくらしを支えていた。田んぼの生産性があがって、生態系は大きく崩れた。
 生き物と人が共存できる農業を目指して、排水路に魚道を作って魚の産卵を支援している。オーナー制で多くの人に関わってもらっている。観察会や稲刈り祭を開催する。学校教育とも連携している。
イ「巨木と水源の郷を守る会」代表の小松朱美氏より
 琵琶湖の西岸、高島市、湖北には、広い森が広がっている。トチノキは、渓流の始まる場所に生育し、水源林を構成する。滋賀では、栃の実を食べる食習慣があり、トチノキを切らない傾向があるため、トチノキの巨木が生育している。市場で人気がある。安曇川(あどがわ)源流の伐採が活動のきっかけ。全国最大のトチノキ群が、業者の買い付けにより伐採の危機にある。市民の力で守っている。
(4)対談 ~「市民と守り活かす、これからの琵琶湖」~
   コーディネーター 石田達也弁護士
   パネリスト 三日月大造滋賀県知事、西野麻知子氏
 対談では、琵琶湖を舞台に繰り広げられる様々な活動の紹介と琵琶湖を守り生かすための法制度等について、話されました。
 三日月知事は、琵琶湖の保全及び再生に関する法律(以下「琵琶湖保全再生法」と言います)の制定の過程では、なぜ条例ではなく法律なのか、なぜ琵琶湖だけが特別扱いなのか等の批判的な意見も多くあったことを紹介し、高度経済成長期に総合開発で壊したこと、悪くしたことがあったこと、琵琶湖は国民的資産であり、1450万人の飲料の源であり、国家プロジェクトとして琵琶湖の改善を成功させることは、日本だけでなく世界の湖沼改善のモデルになり得ることなどを粘り強く広げて法律の制定にこぎ着けたことなどを話されました。西野氏は、琵琶湖が国民的資産として位置づけられたことについて、画期的であると評価し、「まもりながら生かす」という発想が大事であると指摘しました。
 水位操作の問題が、琵琶湖再生法に盛り込まれなかったことについて、三日月知事から、合意形成が難しかったことが話されました。西野氏からは、雨が降る6月以降は水位を下げる、渇水となるとさらに水位が下がり、生物への影響は大きいとの指摘がありました。これに対し、知事は、京都・大阪にも影響があるので、水位調節は、利水・治水の観点から国が管理するが、生物を守る観点も訴えていきたいと答えました。
 環境教育について、三日月知事から琵琶湖で行われている「海の子、山の子、田んぼの子」の環境教育が紹介され、子どもたちの意識が大きく変わると話されました。西野氏も、滋賀県内の大学生に、ボランティアで、水草除去に来てもらって、琵琶湖上にでて環境学習をするきっかけづくりをしていきたい等と話しました。
 三日月知事は、持続可能な活動にしていくこと、例えば、さかなのゆりかご水田でつくった米やそれを元につくった酒を飲食してもらい、消費者とつながり、循環する取り組みにしていくことが大事であると指摘し、県もPRしてそれを下支えをしていくと決意を述べました。そして、裾野を広げる仕組みとして、資金や人材に不足している団体と、社会貢献したい企業をつなぐ取り組みを紹介しました。
 将来ビジョンについて、知事は、命・祈り・癒し、生き方・食べ方・暮らし方を変える象徴的な存在として琵琶湖を位置づけるべき、西野氏は、歴史的な景観が沢山ある、琵琶湖を破壊する遊びではなく活かす遊びを作り出していくべきと述べ、対談が終了しました。