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2017-07-31 インターネット被害にあったら(誹謗中傷,プライバシー侵害等) 3
 
 
弁護士 濱本 由

1.はじめに
 前回までは,誹謗中傷やプライバシー侵害記事の削除方法についてご説明しました。
 しかし,内容によっては,当該記事を削除しただけでは被害が回復されず,書き込みをした人(発信者)に対する損害賠償請求を検討せざるを得ない事もあります。匿名の書き込みである場合,まずは発信者を特定する必要がありますので,ここでは発信者特定の方法についてご説明します。発信者の特定は①サイト管理者からIPアドレスの開示をうけプロバイダを特定したうえで,②プロバイダに対して発信者情報の開示を求めるという2段階の作業になることがあります。

2.発信者情報開示請求(管理者に対する直接の申し入れ)
 削除請求の時にもご紹介したテレコムサービス協会の書式によって管理者に発信者情報の開示を求めることができます。具体的には,規定の書式によって発信者の氏名,住所,メールアドレス,IPアドレス等を照会することができます。しかし,開示請求を受けた管理者は発信者に開示して良いかどうか確認を取り,同意が得られた場合のみ開示しますので,この方法で発信者情報の開示を受けられるケースはそう多くありません。

3.発信者情報開示仮処分(裁判所を利用してIPアドレスの開示を受ける手続き)
 上記2の方法で任意の開示が得られなかった場合,まずは,発信者のIPアドレスを特定するために,サイト管理者の住所を管轄する裁判所に,サイト管理者に対する発信者情報開示の仮処分を申し立てます。接続プロバイダの通信記録は6ヶ月以内に削除されてしまうため,本案判決を待っていられないことが「保全の必要性」となります。裁判所の開示命令が出れば,サイト管理者がIPアドレスを開示することがほとんどのようです。

4.発信者情報開示請求訴訟(裁判所を利用して発信者の氏名等の開示を受ける手続き)
 上記3の方法でサイト管理者からIPアドレスの開示を受けた場合,まずIPアドレスから接続プロバイダを特定します。つぎにプロバイダに対して発信者の氏名,住所,メールアドレス等の開示を求める裁判を起こします。管轄は,接続プロバイダの住所を管轄する裁判所となります。開示を認める判決が出れば,発信者の氏名,住所等を知ることができますので,発信者に対して損害賠償請求を行うことができます。

5.最後に
 このように,インターネットで誹謗中傷やプライバシー侵害を受けた場合,被害回復に掛かる手間や時間は膨大なものとなりますし,一度拡散してしまった情報は,記事の削除や損害賠償で完全に回復できるものでもありません。まずは,「インターネットに他人を傷つける書き込みをしない」といったマナーを各人が身につける事が必要不可欠です。しかし,それでも出現する悪質な書き込みには,ご紹介したような手続きで発信者に民事上(場合によっては刑事上)の責任を自覚させることが肝心です。仮処分等,裁判所を利用する手続きは個人ではなかなか難しいことがありますので,一度弁護士に相談されることをお勧めします。