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2015-06-30 アメリカ「生物多様性オフセット」視察報告
 
 
150630吉江ブログ写真

弁護士吉江仁子です。

今日は、法律や事件の話ではなく、弁護士会の公益活動(委員会活動)のお話です。


私は、弁護士になってから9年、ずっと弁護士会の公害環境委員会に所属しています。
この度、日本弁護士連合会(日弁連)の公害環境委員会の海外調査で、盲導犬のクルーと、アメリカに行ってきましたので、簡単に報告いたします。


「生物多様性オフセット」という言葉をご存じでしょうか。

地球規模での環境破壊が進み、一説によれば、産業革命以降の最近の200年間には、毎年、4万種が絶滅しているとのことですが、そのことが、いつか、生態系のバランスを大きく崩し、人類を絶滅に追いやるかもしれないとの危惧感が、国際社会で高まっています。

そこで、地球環境科学者や環境NGO、国連生物多様性条約事務局などによって、生物多様性オフセットという考え方が提唱されています。
オフセットとは相殺のこと、つまり、開発者に対し、生物の生息域への悪影響を回避し、低減し、どうしても回避不能な影響がある場合には、別のところで、その影響を回復させる義務を負わせることで、総体としての生物多様性を保全するという考え方です。

アメリカでは、「水質浄化法」と「種の保存法」の二つの法律で、開発者に対し、法律上その義務を課しています。


今回の調査の行き先は、カリフォルニア州。
ここでは、ミティゲーションバンキングが、動いていました。

ミティゲーションとは、「代償」ということです。
川からの取水によって、干上がってしまった川筋を回復するようなプログラムを行っている会社がミティゲーションバンキングの提供者で、例えば、1エーカー(約4,000㎡)の土地を開発しようとする事業者は、ミティゲーションバンキングの提供者から、1クレジットを購入し、開発行為によって失う生物多様性を回復するための資金を負担しなければならないという制度です。

私たちが訪れたウエスタンベルト社では、492エーカーの土地に対して、290クレジットの価値が認められていました(1クレジットあたり1エーカーの開発が可能)。

でたらめなクレジットが、開発行為の免罪符になるのではないかと心配していましたが、アメリカ環境省などがきちんと審査しており、環境回復地域は、半永久的に、管理保全され、それら地域が有機的につながってより効率的に生物の生息域を回復していくことに寄与していました。


さて、クルーにとっては、初海外。

アメリカでは、「アメリカ人障害者法」という法律があり、あらゆる形態の障害を理由とする差別を禁止し、「使役動物」の尊重も義務づけられています。

ちなみに盲導犬の稼働頭数は、8000頭以上(世界1位。日本は、1000頭で世界3位)。犬だけでなく、いろんな動物が使役動物として活躍しているそうで、現地で、案内してくれたドライバーさんは、超小型の馬が、盲導馬として稼働しているのを見たことがあるそうです。

そんなわけで、現地では、どこでもまったく問題なくスムーズに受け入れてもらいました。

写真は、ヨセミテ国立公園での一行の様子です。
自然のままに、自然が管理されており、ごく限られた部分のみ、人間が立ち入ることができ、それをはずれたり、ゴミをポイ捨てしたりすると瞬く間に警察がやってきて、500ドルもの罰金を支払うことになるとのことでした。


アメリカの環境保全や障害者差別に対する制度や取り組みを肌で感じたすばらしい視察となりました。